平成19年8月11・12日知内川など道南編



 同僚の奥田さんとの一泊の釣行が今年も実現した。3年目の今年は一気に函館を超え、北島三郎のふるさと知内町を訪ねることにした。旧友たちが現地の川の案内を買って出てくれたのだ。釣果は二の次の「再会ツアー」。8月11日午前5時30分、奥田さんの車で札幌を発つ。きょうも暑くなりそうだ。



知内(しりうち)に着いたら待っていたのが餌取りだ。いつもは15匹400円ほどで買っているイタドリムシを取るのだ。イタドリムシは蛾の幼虫で、イタドリの茎に入っている。国道沿いのイタドリを片っ端から当たる。釣具店にあるのと違って元気だ。初めての体験。4人で90匹ほどゲットする。









前夜までの雨で知内に来る途中の川はどこも増水し、濁流と化していた。最初に入ったのは道南の秀峰・大千軒岳(だいせんげんだけ)に源を発する知内川の三大支流のひとつツラツラ川だ。やはり濁っているものの、水量は少ない。4人、思い思いの方向を目指す。当たりはほとんどない。プロ級の釣り師・岡田さんによると、雨が降って水かさが増すと魚は上流に行ってしまうそうだ。









ツラツラ川を早々に切り上げ、大千軒岳の登山道から別の支流・澄川(すみかわ)に入る。名前のごとく、澄んだ水が涼しげだ。昼まだ暗く、もやが立ち上っている。旧友の鳴海君が川沿いの道から糸を垂れて試すと、ヤマメがすぐに掛かる。期待に胸が高鳴る。








上流を目指す奥田さんに続いて釣り上がって行くと岡田さんが戻ってきた。すぐ上の深みでヤマメが入れ食いだったそうだ。「深みを流せばブラウントラウトがいるかもしれない」とポイントを譲ってくれる。でも、釣れるのはリリースサイズのヤマメばかりだ。あきらめかけた時、ドンドンと強い引き。合わせると良形のヤマメだ。すぐ上の枝に糸の先が引っ掛かり、ヤマメが宙吊りになる。すかさずネットで取り込む。 動悸がなかなか治まらない。









来たルートを下る時、岡田さんはかなり先を行っていた。気温と水温の差がかなりあるのだろう。もやが濃くなってくる。ふと前方を見ると、木の枝の下に何か黒いものがある。ヒグマ?まさか。恐る恐る、遠巻きに近づく。動かない。リュックの脇にロシア製の大型ナイフを挿してある…。1歩、また1歩。あぁ、やっぱり岩だ。緊張が一気に解ける。










1日目が終了。民宿で大宴会だ。前浜でとれたばかりの新鮮なウニ、アワビ、イカ、ツブ、さまざまな焼き物、そしてこの日の釣果がずらり並ぶ。うーん、冷えたビールが喉を刺激する。途中、岡田さんからの差し入れが出てきた。岡田さんが友釣りで揚げたアユだ。丸々と太っている。アユは1年魚。これだけ大きくなるのはコケに含まれた豊富な栄養からだそうだ。来た甲斐があった。









2日目。きょうは目的がある。外来魚のブラウントラウトを釣るのだ。ブラウンは欧州原産のマスだ。シューベルトの「ます」はこの魚がモチーフになっている。全国の河川に「密放流」されて生息域を広げているが、自然状態で繁殖しているのは北海道だけだ。環境に恵まれているからだろう。道南では70センチを超える大物が釣れる。函館の隣の北斗市(旧・上磯町)の上磯(かみいそ)ダムを目指す。ここに20年余り前、誰かが放したブラウンが上流と下流で釣れるのだ。









ダムは戸切地川(へきりちがわ)に設けられている。ダムの上流数百メートルで車を降り、川に入る。先客がルアー、フライで釣りの真っ最中だ。餌釣りには向いていないのかもしれない。ルアーを試みる。








奥田さんから「釣れた!」の声。駆けつける。ヤマメに似ているが、体側に赤い点が散在している。ブラウントラウトに間違いない。全長20センチほど。「引きが強いから誰かが放すんだろうなあ」と奥田さんが言う。やはりいた。当初の目的は達した。移動しよう。









帰途、八雲町(やくもちょう)の野田追川(のだおいがわ)に寄る。初めての川だ。水は澄んでいる。橋の下の深みで奥田さんが20センチ超のヤマメを揚げる。すぐそばでぼくも同じくらいのヤマメをゲット。きょうはもういいか、と、あうんの呼吸で帰り支度を始める。日はまだ高い。札幌の最高気温は34度に達したとラジオのニュースが伝える。渓流にいると別世界だ。往復760キロの旅が終わろうとしている。






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